コラム

No.25 コルシカ島のワイン造りとブドウ品種

 ワイン大国フランスでも、地中海に位置するコルシカ島には特徴がある。フランスには300以上ものAOC(原産地呼称統制)ワインがあり、うちコルシカ島には9つのAOCがあるが、その条件に挙げられているのが、ブドウの地元品種でワインを醸造しなければならない、というものである。

 フランスワインは、カベルネ・ソヴィニョン、シャルドネなどの有名品種が用いられている。しかし、このような品種は米国や豪州、あるいは南米のチリやアルゼンチンなど新大陸のワイン生産国でも栽培されている。

 一方で、コルシカの二大地元種は、シャッカレール(Sciaccarellu)、ニェルッチュ(Niellucciu)である(日本のワイン紹介本などでは「スキアカレロ」「ニエルッキオ」などと書かれているが、これは誤りであり、現地でこのように発音されることはない)。これに周辺地域(南仏、サルディニア島等)でも栽培されるベルメンティーヌ(Vermentinu)を加えたものが地元種とされている。

 素人眼にはその外見上の違いはあまりよくわからない。しかし、1960年代ワイン増産期に、島でも多くの収量が見込めるカベルネ・ソヴィニョンなどが優先的に大量植樹されたが、1980年以降のワイン価格暴落とEU生産調整により島の農業が打撃を受けたことで、1990年代以降、地元品種への見直しが進むことになる。

 こうした独自品種の追求こそが、今日のコルシカワインの品質と独特の風味を維持しているのである。

ニェルッチュ