コラム

No.37 リヨンの街

 ベルナール・ライール(リヨン高等師範学校)の研究に触れるようになってから、彼がいるリヨンの街に興味を抱きはじめた。別に彼はリヨンの研究をしているわけではないので、単に個人的に気になっただけである。リヨンはフランス第二の都市であるけれども、パリのように多くの情報が入ってこないところも何となく魅かれた理由かもしれない。

 リヨンを初めて訪れたのは、2012年3月のことで、そのときは2週間ほど滞在した。リヨンの中心部は非常にコンパクトで、メトロやトラムなど交通機関も発達していて、どこへ行くにもとても便利な街だった。それにリヨンを象徴するフルヴィエール大聖堂の建つ丘に登れば、世界遺産に登録されているリヨン歴史地区を含む美しい街並みが一望できる。 

 ところでリヨンは「美食の街」「絹の街」「金融の街」「ハイテクの街」などと呼ばれ、色んな顔をもっている。その中でも特に興味をそそられるのはリヨンが「美食の街」ということだ。リヨン郊外にはかの有名なポール・ボキューズの本店があり(残念ながら行ったことはない)、街中には地元料理を出すブションと呼ばれる庶民的なレストランも多数ある。そのうえ2018年には、リヨン国際美食館(Cité Internationale de la Gastronomie de Lyon)も開業する予定のようだ。これによって、「食」という文化遺産がどのように知として保存され発信されるのか、今から非常に気になるところである。

 実はいま私は、ブルデューの『ディスタンクシオン』の影響もあって、「食」を社会学することに大きな関心を抱いている。思いがけず気になりはじめたリヨンの街は、その意味でも私にとって目が離せない存在であり続けている。