コラム

No.9 映画図書館(La Bibliothèque du Film)で調査する

 パリにある映画図書館(La Bibliothèque du Film / BiFi)には、映画に関する資料、図書、雑誌、フィルム、DVDなどのデジタル映像、脚本、撮影資料、ポスター、チラシなどに加えて、その他関連文書がアーカイブ化されている。  

 ここに収蔵されているもののなかには、それがまだ歴史的資料になる前、つまり当時実際に使われていた頃に、関係者によって走り書きされたメモのようなものまでも保存されている。しかも、調査スペースでは、予約をすれば誰でも原本を閲覧することができるのである。 

 私が、この図書館を訪問したのは、ヴィシー政権期のフランスにおけるアニメーション制作に関する資料収集のためであった。政府とアニメ制作会社のあいだで取り交わされていた文書が同時代の資料とともに綴じられていた。フランスのプロパガンダアニメーションについての著作があるセバスチャン・ロファ(Sébastien Roffat)もまた、ここで缶詰になって調査していたとのことだ。   

 アニメ制作会社が政府に宛てたタイプライター打ちの文書をみていると、印刷は薄いものの、フランスでアニメ産業を興すために、国家からの経済支援が必要不可欠であることを説得しようと奮闘する様を感じとることができる。当時、アニメ市場はアメリカのディズニーやフライシャーによって独占されていたが、経済支援が継続的になされれば、フランスもそれに匹敵する作品が制作できるようになるということが訴えられていたのである。それだけでなく、実際にどの程度資金が必要なのか、具体的な金額も記されている。今も昔もアニメ制作には金がかかるのだ。    

 第2次世界大戦期にアニメ産業が勃興した国家は多いが、それに関する資料が閲覧できるかたちで保存されていることはほとんどない。アニメーションが研究対象となって日は浅いが、まずは、資料のアーカイブ化が必要だろう。 

複写した資料(複写を希望する資料番号を黄色のしおりに書いて依頼する)