コラム

No.1 フランス人とは誰か

 『シャルリー・エブド』襲撃に始まるフランスの一連の「テロ」は、世界を揺るがしている。しかし、フランスにおける「テロ」事件は、昨日今日に始まったことではない。かつて、アルジェリアがフランスから独立しようとしたとき、その中心的組織FLNも、アルジェを中心にテロ活動を行っていた。その経緯は、映画『アルジェの闘い』に見事に描かれている。

 「イスラム教徒の仇を討つ」などの理由で、パリでさまざまな襲撃事件を起こした「テロリスト」の多くは、アルジェリア系フランス人である。フランスで、アラブ人でありながら、フランス人であるという両義性を生きるとは、どのようなことなのだろうか。また、アラブ系フランス人と、必ずしも常に接する機会があるわけではない、「フランス系フランス人」「ヨーロッパ系フランス人」は、アラブ系フランス人にどのような思いを抱いているのだろうか。

 私の友人のひとり(フランス系フランス人)は、父がアルジェリア戦争時に兵役でアルジェに行ったことは知っているが、父はそのときのことをいっさい話さず、また今でも当時の悪夢にうなされることがあると語っていた。フランスとアルジェリア、そして二つの国のはざまにいるアルジェリア系フランス人のあいだには、いまも想像を絶するような溝があるように思われる。