コラム

No.49 人口減少社会における学問の継承

 最近、気になっていることがあります。それは、今後の日本社会における人口減少が学問の継承にどのような影響をもたらすのだろうかということです。このような人口減少社会における学問の継承に関する真剣な議論の動きがあることを私は寡聞にして知らないのですが、どこかでなされているのでしょうか。

 国立社会保障・人口問題研究所による「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生3仮定(死亡中位仮定)によれば、2065年に、出生高位推計では総人口が9,490万人になり、出生中位推計では総人口が8,808万人になり、出生低位推計では総人口が8,213万人になるという結果が出ています。国勢調査によれば、2015年の総人口は1億2,709万人であったので、仮に出生中位推計の総人口に落ち着くとするならば、日本の総人口は半世紀の間におよそ3分の2になる計算です。また、単純に人口が減少するのではなく、今以上の少子高齢化社会となります。

 このように人口が減少していくとしたときに、これまで各学問分野で築き上げられてきた叡智が、灰燼に帰すことなく、はたしてうまく後世に継承されうるのだろうかと危惧しています。もし、うまく継承することができないのであれば、とても残念です。もちろん、単なる杞憂に終わる可能性もあるのですが、どのような事態が発生するのかについては今のうちに想像力を働かせておいてもよいのではないかと思っています。