コラム

No.41 田辺寿利初代会長との縁(えにし)

 過日行なわれた本年度の日仏社会学会大会は、荻野会長の下、気鋭の研究者が多く集って充実の大会となった。本学会の田辺寿利初代会長もこの発展ぶりを喜んでおられると思う。

 この田辺と、筆者が勤務する創価大学とのご縁を紹介したい。本学の創立は、『創価教育学体系』(1930年)の著者牧口常三郎の教育理念に源を発している。実は牧口は田辺と親交があり、23歳年下の田辺を師として社会学を学んでいた。上記の著作にもコント、デュルケムなどが多く引用されている。田辺はこの著作の発刊に、新渡戸稲造、柳田國男と共に一文を寄せている。曰く「一小学校長たるファーブルは昆虫研究のために黙々としてその一生をささげた。学問の国フランスは、彼をフランスの誇りであるとし、親しく文部大臣をして駕を枉げしめ、フランスの名に於いて懇篤なる感謝の意を表せしめた。一小学校長たる牧口常三郎氏は、(中略)ついに画期的なる『創価教育学』を完成した。文化の国日本は、如何なる方法によって、国の誇りなるこの偉大なる教育者を遇せんとするか」(『田辺寿利著作集』第5巻)と。残念ながら「文化の国日本」は牧口を思想犯として逮捕・投獄し、獄死するに至らせている。

 牧口に大きな影響を与えたフランス社会学。1971年の本学スタートの際に文学部社会学科が置かれ、少し後から新明正道、阿閉吉男などの錚々たる社会学者が集ったことに田辺との不思議な縁を感じる。その後佐々木交賢教授が本学会の会長となり、本学で事務局の業務に携わらせてもらったときにも、そのご縁から精一杯やらせてもらおうと思った。

 2020年に日本で、次いで2024年にフランスでオリンピックが開かれる。「文化の国」日本は、そして「学問の国」フランスはいかなる祭典を催すのだろうか。